平日は都会の暮らし。
週末は農園ライフ。

野菜づくりユニット “ベジコ”さんは、実はかなりの都会派だ。九州最大のまち福岡のほぼ真ん中に住み、仕事も生活圏もこのあたり。夜の繁華街で飲んだあとは、酔い覚ましに家まで歩いて帰れるような都会っ子。
……と、そんな日常の暮らしを知っているとちょっと想像しにくいが、半面、長靴と日よけ帽のよく似合うファーマーとしての顔ももつ。

ファーマーライフのはじまりのきっかけは、ベジコの里美さんが週末農家を楽しむ友達からもらった野菜との出逢いだ。とっても美味しい野菜を前に、どうやって作ったんだろうかという好奇心がムクムク。元来の食いしん坊も手伝って「自分も育ててみたい！」と思い立ったのだとか。
ベランダのプランターで野菜をつくるぐらいの経験はあったものの畑でおこなう本格的な野菜づくりは初体験。
最初は、福岡市が貸し出す市民農園からのスタートだった。

おいしい野菜の向こうに
きちんと育てるための奮闘あり！

ベジコは実はふたり組み。里美さんが友人のりなさんを誘って“ふたりではじめた”ことが功を奏したと話す。
基本は週に１～２回、ちょっとした空き時間に「クルマで１時間くらいの郊外の農園へ通う」というスタンスは今も変わらない。言葉にすると簡単そうだが、いやいや、これを一年間続けていくとなるとそれなりに大変だ。そんな大変さも、「ふたりでやってきたからこそ続けてられたね」と、口を揃えてふりかえる。仕事や日常のあれこれで忙しいときは、割り切って一方に任せるようにしているのもコツなのだとか。
しかし、取材当日のおふたりを見ていると、とにかく次々と動く手と同じくらいに口も動く。しゃべって、大きな声で笑って、喜びがたえないのもきっと長続きの秘訣にちがいない。

ちなみに、りなさんは農園をはじめてから、出産を体験。
今では娘さんも農園にやってきて、小さなファーマーとしてしっかり活躍中だ。

野菜づくりに魅了されたベジコのおふたりは、いつしか市民農園だけじゃ物足りず近くの休耕地を借りることになっていたそうだ。2005年からはじまった休耕地を利用しての畑づくり。これは条件の整っていた市民農園とはまた違い、土を耕す開墾から手掛ける面白くも難しい体験だった。

近所の牧場から牛糞や鶏糞をわけてもらうなど、試行錯誤していったおかげか年々土の具合がよくなっているという。
確かに、収穫したてのタマネギをいただいときは、その甘さに驚いた。「野菜づくりは土づくりが大切」とは良く聞くが、野菜の味にそれが実証されているようだ。

100平米ほどの農園には、人参やタマネギのような日常野菜はもちろん、ケールや紫蘇、アスパラなどの変わりダネも含め常時10～20種くらい無造作に育っている。夏場になれば、１週間あけると草がボウボウ。日射病予防のために、まだ日が明けきらないうちに畑に出てきて、草取りに追われる。収穫のない冬場も、次の季節に備えて土づくりなどが必要。農業の一年は、実にやるべきことが山積みだ。
なのに、最大のお楽しみである収穫は、「あっという間に終わってしまう」のだ。

週１～２のペースで活動中のベジコチームは、うっかり収穫のタイミングを逃すこともある。そんな時は、あえてそのままにして鑑賞用にしておくこともあるらしい。「熟していく野菜ってどうなるの？」という小さな疑問がきっかけで植物の思わぬ生態に出会えることもあるそうだ。実に面白い。

「野菜ってあれだけ手がかかっているのにスーパーで買うと本当に安いと思うよ」そんな言葉がでてくるのも、自らつくっているからこそ。都会に暮らしながらも、自分たちらしいリズムで野菜づくりを楽しむ。ベジコライフには、これからの土との関わり方のヒントがギュッと詰まっていそうだ。